「テクノロジーのショーケース City & Tech シンポジウム 2019」 第2部レポート
開催概要
先端技術をまるごと集積させた都市を世界に先駆けて作るべく、発足したCity&Tech(CT)委員会の活動、成果を知ってもらうためのイベント「テクノロジーのショーケース City & Tech シンポジウム」を11/12(火)に開催いたしました。
第1部レポートはこちら
日時:2019年11月12日 (火) 16:00〜18:05
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館8Fホール
登壇者
第1部「City & Techとは」
- 川原圭博
- 東京大学
- 安倉一徳
- タニコー株式会社
- 田中敦典
- 東急不動産株式会社
- 中村伊知哉
- CiP協議会
- 石戸奈々子
- CT委員会(ディスカッションモデレーター)
第2部「データ流通基盤と情報銀行」
- 生貝直人
- 東洋大学
- 米津雅史
- 東京都
- 関治
- ソフトバンク株式会社
- 中川裕志
- 理化学研究所
- 落合孝文
- 一般社団法人データ流通推進協議会
- 中村伊知哉
- CiP協議会
- 石戸奈々子
- CT委員会(ディスカッションモデレーター)
第2部「データ流通基盤と情報銀行」
「スマートシティとデータ流通基盤-個人中心型スマートシティに向けた制度設計-」 東洋大学 生貝直人
海外のスマートシティとデータの取り扱いについて触れ、竹芝での情報銀行に関するご提案について発表いただいた。
スマートシティとは社会全体のデータをどのように収集して、都市を設計するか。
データの扱いに長けた企業としてアリババ、グーグルトロントIDEAがあるが、グーグルでは独立したデータ信託機関:データトラスト(≒情報銀行)によって管理する。
海の資源等、グーグルトロントのIDEAと竹芝の状況は似ている。
EUではデータポータビリティの権利として、自らのデータを手元に取り戻したり他のところに移す権利が注目を集めている。(ex:DECODE分散型市民所有型データエコシステム)
このような海外の事例がある中で、互恵主義を念頭においた「竹芝CiP情報銀行」についてご提案をいただいた。
- 竹芝CiPの参加事業者は、プロジェクトで取得した個人情報を、本人の求めに応じて、竹芝CiP情報銀行にデジタル提供可能とする(データポータビリティ)
- 竹芝CiP情報銀行に集約された個人ディープデータは、本人と参加事業者が一定要件でAPIで利用できるものとする
- 匿名[加工]データは自由に、個人情報は本人[包括]同意を前提に
- どのようなデータを扱い得るか?
① 店舗でのキャッシュレス決済履歴及びそのサービス利用内容
② ゆりかもめやバス、シェアサイクル、船舶等交通機関の利用履歴
③ GPSやWifi(ビル内等)から取得する移動履歴等
「Society5.0の実現に向けた東京のスマートシティ化について」 東京都 米津雅史
AI及びビックデータを活用し、社会のあり方を根本から帰るような都市計画の動きが国際的には急速に進展しているが、多分野での実装を行う「まるごと未来都市」は、未だ実現していない。日本においても必要な要素技術はほぼ揃っているが、実践する場がない。
移動、物流、支払い、行政、、といった複数の領域を広くカバーし、生活全般にまたがってデータ連携を行うことを前提にしたスーパーシティの構想も議論されている。
我々としては、先行知見を持ち寄りつつ、持続可能なスマートシティ実現のためのアーキテクチャを、実証研究を含めて体制の検討、実施していく。また、ホワイトペーパー等具体的なアーキテクチャを各事業・自治体で活用したり、竹芝等での取り組みによる実際のデータを掛け合わせたりと双方向で進めていきたい。
今後の取り組みとして、TOKYO.AI特区として、 データの蓄積、先端企業の集積等に競争力を有するエリアを指定し、AI等の先端技術によるデータ活用で、複数のサービス領域を横断するプロジェクトや、5Gの普及を含めモバイルインターネットが繋がらない場所がない東京をつくくる「TOKYO Data Highway」の基本戦略についてご発表いただいた。
最後に、竹芝等の活動を他の地域に広げていくにあたり必要となる、大企業、スタートアップ、大学、都市等の、好循環が出てくるコミュニティ形成「エコシステム拠点都市・東京コンソーシアム構想」について発表していただいた。
「共創で実現するスマートシティ」 ソフトバンク株式会社 関治
最先端テクノロジーの活用により通信事業を超えた事業戦略beyond carrierや、都市課題の解決を目指したスマートシティプロジェクトについてお話しいただいた。
ディスカッション
○ 石戸:スマートシティって?
中川:スマートシティではデータが集められる。しかし、データはスマートシティの外側へ染み出していく。その状況を考えた上でサービスを考える必要がある。
生貝:スマートシティはデータやソフトが本体で、その上に物理的なものが乗る。
○ 石戸:THEスマートシティってどこ?
生貝:エネルギーは欧州北欧。本格的にデータを活用してサービスを提供する、というのはまだ各国が競っている。
中川:自動運転はヘルシンキと上海。
○ 石戸:データを活用する利便性は?
落合:この時間帯は混んでいる等、移動に関する利便性の向上ができるなど、人流・物流やMaaSの領域に利用できるのでは。
○ 石戸:どんなデータを活用する?
米津:個人の移動履歴はまだ先。活用するためのルールを定める必要がある。利便性を先に示さなければならない。
○ 石戸:グーグルのトロントでの活用は始まっている?
生貝:活用しようとしている。
○ 石戸:日本のみならず海外でもデータ収集は不安に感じられている?
生貝:そうだとおもう。よりカスタマイズされる等利便性につながるが、どこまでデータを取り扱うかルールを作るなど、議論しながら進めていくべき。共通する課題である。
○ 石戸:データの取り扱いに関してどう考えるか。
中川:ロンドンでのオープンデータ利用の事例として、場所ごとの水害の可能性などが公開
されると、土地価格に影響がでて資産価値が変動する人も現れるという問題がある。 また、個人個人の最適解を全員に対して示すことはやっていいのかどうか。不公平にならないだろうか。
米津:どの分野でどのデータを取り扱うのかはセンシティブ。作り上げていくための議論は非常に大事。
○ 石戸:どの分野のデータから取り掛かる?どこが運営主体になる?
生貝:どこを歩いているのか、混雑状況等、個人に紐付かない範囲で全体の問題を解決するところから。運営は少なくとも外部監査がいて、本人たちの目が届くところで。
落合:エリアによって様々なデータやプレイヤーが集まる。それぞれが情報銀行として認証を得たり、本人のデータのコントローラビリティが保たれる形で、データを使うことに対して同意を得つつ、データポータビリティなども視野にうまく連携していければいいなと。
○ 石戸:日本(or東京)が目指すべきスマートシティの在り方とは?
米津:東京が目指すべきは、自動運転・エネルギー等、個々でなく、色んなものを複合して提供し、強みとしていきたい。
落合:特区やサンドボックスを含めなるべくいろいろな試みをできる環境を作るようにする。
生貝:デジタルが主役。データが主役。個人個人の自立性。これまでよりも自身を強化するようなアーキテクチャを創る。
中川:人口が集中しているので、データを閉じ込めていくことはできない。スマートシティが拡大していくとどうなるかをイメージして実装していく。また、データは増えていく。が、死んだらデータは増えなくなる。死後のデータはどうするか。活用するのか?そのまま死滅するのか?その辺りについても取り組むことを期待したい。
中村:竹芝だけでやってもあまり意味がない。産官学と協力し合い、他地域にも展開していく。また、国に対して提言していくことも見据えて。