開催概要

第6回CT委員会を開催しました。

日時:2020 年 2 月 17 日(月) 9:30〜11:30

場所:アビタス 八重洲セミナールーム 1

発表内容

  1. 東京大学 渡部俊也先生:東京大学の産学協創推進、竹芝における産学連携
  2. 日本電気株式会社 宮崎真次様:データ利活用スマートシティ、映像解析技術
  3. KMD研究所猪野様:高知県 宿毛市でのEHR&PHRの取り組み

発表・議論

東京大学 渡部俊也先生:東京大学の産学協創推進、竹芝における産学連携

産学共創推進本部:150人ほどの組織。ベンチャーの振興、共同研究等を行なっている

大型の組織間連携:企業と将来のビジョンを策定しながら、それに向け連携。日立東大ラボ、NEC、ダイキンなどと協定を結んできた。

本郷バレー:100社のベンチャー集積

  • ベンチャー企業数368社、うちIPO17社。
  • 東京大学関連ベンチャーエコシステム:大企業との単なる共同研究でなく、ベンチャーエコシステムとの連携。
  • 学内インキュベーション施設も多数。
  • FOUND X:東大卒業生を呼び込みスタートアップを立ち上げる場所に。

大学のイノベーションエコシステムによるデジタル知財の形成と活用。
知財、人材、資金の循環を大きくするという考えの元、産学連携をやっていく。

その活動の1つとして、東大 × ソフトバンク:本郷と竹芝にAI研究所 10年間で200億円規模を投資。Beyond AI 研究所

  • 基礎研究:世界トップレベルのAI研究
  • 応用研究:東京大学教員との共同研究

基礎研究領域:AI × Top Science

  • Super-AI: AI基礎研究。

低消費電力で計算できる環境等を念頭に次世代AIの研究。

  • Hybrid-AI: AI × 医療、物理。

強みのあるロボディクス等、先端工学との融合。海外の著名な研究者との連携。

応用研究領域:竹芝 JV-Platformからジョイントベンチャーを作っていく。
基礎研究領域の成果も含め短期間のプロジェクトで事業化。(ヘルスケア、公共社会インフラ、製造領域)

竹芝にひかれるネットワーク SINET:学術基盤ネットワーク(データ流通網社会基盤インフラ)。→計算機リソース、ビッグデータ

次世代のベンチャーエコシステム:成果→ジョイントベンチャーに。

CIP制度(collaboration Innovation Partnership制度)。技術研究組合制度。

  • 企業と大学が共同で研究開発を目的とした組織を立ち上げ、その研究成果を円滑に会社化して事業を立ち上げられるよう、整備された制度
  • 株式会社に転換する際は、研究成果を株式に反映。
  • 資本金だけで決まらない。
  • 大学から株式会社に転換する制度→CIP制度。
  • 本郷は近々に拠点を立ち上げる。竹芝もこれからプロジェクトを組成していく。

竹芝拠点開設に向けて

  • 具体的事業化が見えるプロジェクト
  • 上記を指させるマネジメントチームの組成
  • 竹芝スマートシティとの接続

コメント・議論

マネジメントチームの組成について。一時的でなく、フルコミットするのか。

  • (テンポラリーでなく)10年を見据えている。まずは2,3年の出向契約を各社にできれば。

竹芝スマートシティの取り組みをしてきたこのチームとどう融合していくのか。

  • 情報共有→次の段階としてどういう座組みで連携するかを議論して行けたら。

日本電気株式会社 宮崎真次様:データ利活用スマートシティ、映像解析技術について

NECが考えるデータ利活用スマートシティ

  • Society 5.0。これまでと違う点:人間中心。
  • 分野横断でサイバーとフィジカル空間を行動に融合させることで、人々が快適な生活を送ることができる人間中心の社会。→そのための課題解決にICTを活用していく。

分野横断による新たなスマートシティの取り組み
クロスドメインのデータ連携基盤:横串が難しかったところを、分野を横断していろんな価値を生み出す。

デジタルツイン:サイバーとフィジカルの融合

  • 実世界の状況をサイバー空間にシュミレート→実世界で試す。
  • センシング:フィジカル空間のデータを見える化、分析、シュミレート
  • アクチュエーション:対処計画をフィジカルの世界に適用。

→両輪を回していく:デジタルツインの考え方。

都市経営が実現する持続可能な経済循環モデル

  • 柔軟な都市経営の考え方が必要。
  • データの利活用により資源の最適配置、維持運営を図っていく。

持続可能な街づくりに必要なこと
課題解決に加え、見えていないデータから新たな価値創造。

移動空間整備に活用が期待される映像解析技術および事例について

人間中心、歩行者中心の街づくりについて:気持ちよく歩ける空間、安全安心、様々な移動手段が連携、拠点間のつながり。

そのための次世代移動空間整備へのICTの貢献。

  • 情報収集
  • 分析状況認識:得られたデータからどういう価値を持つのか分析。
  • 施策:先程のアクチュエーション部分。何かの施策を実施。→観測(情報収集)

これらのループを以下に早く回すか→ICTのキモになる。
Ex:街中のデータ分析:一ヶ月→カメラ画像分析により1minに。

都市の情報収集に活用が期待される画像解析技術について
歩行者情報収集:カメラ画像、携帯電話のWi-Fiセンシング、ICカードの履歴等
→1つ1つでなく組み合わせて利用する。

群衆行動解析技術について

  • 人の集まりを群衆の塊単位で、画像解析で捉え分析。
  • ポイント:たくさん人がいる場所の解析→1人1人は難しいが塊なら可能。

人流推定の流れ:アルゴリズム

  • 人口密度の高い場所を解析。(塊として捉える。ディープラーニングを活用)
  • フレームの差分でベクトル:動きを解析。
  • →線の上を何人歩いているか推定。

Wi-Fiセンシングを組み合わせると、広い範囲での人の分布、移動をとることができる。

群衆行動解析:新たな価値の提供(滞留、パニック検知)
安全安心に技術を使うと?→急な変化から、場の異常を検知。

属性別人数と向きの推定(研究中)
誰がどんな広告を見ていた、等の向き・属性を検知できる。
→マーケティングで使われるケースが多い。

深層学習(ディープラーニング)を活用した交通流解析
トラック、バイク、人、等を識別→渋滞の時間、原因の把握が可能に。

NECの生体認証技術。マルチモーダルな生体認証。
ex:安全安心用途で使っている。
多人数顔認証、非積極認証(カメラを向いていなくともOK)が可能。

遠距離視線技術(顔認認証技術の応用)
10mほど離れた場所でも個人が向いている方向を推定。
→商品の関心調査、迷っている様子や、不審行動の検知に。

活用事例について

事例1:都内のターミナルで実証実験。大規模駅構内における人流解析→9割以上検知可。

事例2:スタジアム↔️最寄駅の人流解析
混雑リアルタイムシュミレーションで予測。今の状態から5,10分後を人の流れから予測。
→混雑緩和のための施策の検証ができる。

事例3:国交省 実証事業 国際アート・カルチャー都市。
プロジェクションマッピング等で人の流れをかえる社会実験
ミクロな部分:どこが歩行障害になっているか。

事例4:六本木交差点の事例:プライバシーファーストな街の見える化
推定後のデータ削除等、プライバシー保護を配慮した上で、移動、属性分析を実施。
→この時間この場所はこの属性の交通量が多い、といったことがわかる。
→イベントを打つと通行量はこう変化する、といったことが定量的に分析可。

顔認証を使った取り組み
南紀白浜におけるプロジェクト
顔パス、手ぶらでショッピング等すべてが可能に。接客対応の質が上がる。

プライバシー配慮について。
カメラの画像解析→プライバシーのケアがポイントに。
個人情報保護法 匿名加工されたデータであれば利用可能に。

おわりに、オープンなデータ連携基盤による価値について
1つのデータをいろんなものに適用していくことが、スマートシティ。
Ex:マーケティングのデータ→防災時に活用。
複数の企業を連携によって、データのエコシステムを回していけたら。

コメント・議論

竹芝でやりたいことについて

  • データのマルチドメインな使い方をできるか、実証の場を通して検証したい。

顔認証で決済可における精度と抵抗感について

  • 本人同意をベースに行う、サービスインにあたり、決済会社と連携して考えていく

KMD研究所 猪野様:高知県 宿毛市でのEHR&PHRの取り組み

高知県 宿毛市でのEHR&PHRの取り組み。医療データの利活用に関する取組みについて

  • EHR:電子カルテに乗っているようなデータをネットワークを介し地域で活用すること
  • PHR:個人の健康情報を蓄積し、健康管理していく仕組み

→両方を連携して、予防医療の推進等に活用。

現在の医療を取り巻く課題
医療費の高騰、急速な少子高齢化、地方の過疎化の深刻化
→国民皆保険制度崩壊の危機、地方の崩壊。

EHR,PHRの取り組みはこれらの課題への有効な対策
自身の医療データを匿名化した上で開示していくことが必要になる。
→社会重要性を高めることが重要。

対象地域:高知県宿毛市について

  • 幡多医療圏(2次医療圏)
  • 患者の流出入が少ない独立した医療圏。人口減少の割に、介護費が増加傾向。

この地域のEHRの導入に取り組んできた。
幡多医療圏EHR(はたまるねっと)

  • 目的:南海トラフ等の大規模災害時の医療データの確保。医療データ共有による医療費適正化、効率化
  • 特徴:オプトインによる情報共有に関する同意取得。現在8000人が登録。

宿毛市でのこれまでの取り組み
H21:介護ネットワークを構築
H22:医療介護ネットワーク(医療現場と介護現場を結びつける)
H28:はたまるねっとを導入、H29に稼働開始。

宿毛市でのEHR,PHRの活用イメージ
既に導入したEHRに加え、PHRを追加してデータの利活用を推進する。

  • 実証テーマ:糖尿病の罹患予防の推進
  • 実証方法:糖尿病予備軍を抽出し、血糖値の変動を計測、食事、運動の記録、持続血糖値測定。

実証テーマのポイント

  • EHRを使った対象者の抽出
  • iPhone上での被験者と医療機関のコミュニケーションによるモチベーション維持
  • 食事、運動と血糖値変動の関係をスマホ上で可視化→生活習慣の改善に繋げる。

宿毛市の推進体制について:
幡多医師会、宿毛市、大井田病院、CiP協議会等々が参加した協議会を設立。
今まではタブーとされてきた医療に経済的観点での医療の分析を進めていく。

コメント・議論

個人情報保護法の課題点について

  • オプトインで同意取得をしないといけない部分で、患者さん一人一人の同意をとる部分が難しい。同意は紙ベースでとっている。
  • (なぜアプリでなく紙ベースでの同意取得なのかについて)実務上、高齢者の心理的ハードルとして、署名する行為が同意取得のキーになっていることが現状。
  • 同意取得の部分は、問題が起きた時に大きな論点になってくる。→保守的にならざるを得ない部分がある。
  • (同意の撤回可能か等に関して)同意後、3ヶ月のみ有効。EHRにデータを載せるか、病院でICをかざすことで更新するプロセスを取っている。
  • ICTリテラシーが低い層に対しての取り組みであることが難しい点なのでは。
  • 10年もすると環境が変わってくるのでは。

他地域での横展開、取り組みに関して

  • 都市部の方が人数も多くそこを目指したいが、同意取得、合意形成などハードルが高い。
  • 署名の話について、クレカなど、タブレットにサインしてもらう形も増えてきている。海外のリサーチから、国によってオプトアウトでやっているところもある。基盤を作っていく部分自体よく考えていく必要があるのかもしれない。
  • 次世代医療基盤法ができ、京都大学を中心とした取り組みの中で、オプトアウトで始めようとしている。システムの堅牢さがコストに跳ね返り、コストに見合うビジネスとして難しい部分がある。→海外事例等を参考に現実的にかわしていく必要があるのでは
  • デンマークでは、500万人ほどのデータベースがある。
  • 台湾2400万人。国がデータ管理を行なっている。法的医療が1つ。日本は300もある。医療保険、介護保険を分けているのは日本特有だが、台湾も。
  • 台湾は医療と介護とのそれぞれに制度が存在している。世界的には珍しいが日本と似ている面がある。
  • EHRのサーバーは高知大学医学部に管理。南海トラフ対策に関して意味がない。CiPで東京に設置する場合、ソフトバンクにぜひ相談させてもらえたら。VPNの部分でPHRと連携するために、拡大する上でCiP、竹芝でできたら。

取り組みを広げる上での問題点について

  • EHR側の問題や東京は多様なステークホルダーがいる。竹芝の地元の保険者がそれを求めているのか等、様々な問題がある。
  • 大学が中心になると、その先生がいなくなったときに、終わってしまうプロジェクトが多い。
  • それも含め、集中管理でなく本人の個人管理にした方がサステイナブルに回るのでは。
  • 島根県益田市で進めているスマートシティプロジェクトの健康増進事業では、地元の医師に協力して頂くことにより、行政や住民の信頼を得ることが出来た。
  • 宿毛市でも、同意取得の際は医師の方にやっていただくのが一番通りやすい。
  • (宿毛市のプロジェクトでの進め方について)幡多医療圏に幡多医師会があり、EHRの仕組みを運用している。病院から月額医療用を頂き、運営している。地元にIT起業があり、電子カルテのシステムを導入。会社の起業努力もあり運営をしている。

竹芝での展開について

  • 竹芝でやる際には、働く人中心のエリアになる。
  • 行政よりの話になってくるので、竹芝エリアに限定すると難しいのでは。
  • 憲法組合の同意があれば、データは分析可能。大きな企業の数千数万でのデータ分析が可能になるのでは。その場合、働かれている方は健康でもあるが。
  • その場合でも、元気そうに働いている方が抱えている問題があるのでは。
  • (竹芝エリアの医療機関、医療データの収集場所について)クリニック等は入っていくと思うが、大きなものは現在ない。働かれている方、企業単位なのか、違う切り口で集めた方がいいかもしれない。
  • 若い方は生産性、企業体力の問題になってくるはず。データとして見える化されるといいかもしれない。
  • 医療との連携も大事だが、竹芝の一部でデータを利用、採寸等行えるなど、データがなければデータを積極的に作り出す、その場でサービスを提供する、というのがよいのでは。

議論

匿名加工情報の話で、顔の認証に使うデータについて。

  • 顔の情報は個人情報なので、個人情報保護法に沿った取り扱いが必要になる。配慮した形で匿名加工情報に。
  • 他の地域で使えるなど、本人がデータを持ち、本人の意思によって取り扱われることがいいのでは。
  • (街のデータ活用する用途について)防犯カメラとして設置しているものを、レギュレーションの中で人流計測にも使う。まだまだ日本の中では進んでいなかった。そこをできるようにしたい。
  • マーケティングとして使う点もありつつ、行政として防災等に使えるとなると進みやすいのでは。
  • JRの取り組みに関連して、劇団四季がリニューアルするということで、大人数の人流移動が起きる。お話しにあったスタジアムの件も踏まえ、混雑の課題感に関して利用できたら。

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